「土曜の夜はこれを借りろ」③ (少年)
フォローワーさん1992人到達記念、1992年に書いていた文章
Twitterのフォローワーさんが1992人になったので、僕が1992年に書いていた文章を公開しています。
今回、紹介するコラムは、一昨年亡くなった大島渚監督の佳作、「少年」という映画を題材にした映画コラムです。
「少年」
「もっと日本が広ければいいのになぁ」。
北海道のノサップ岬までたどり着いたときに少年が呟くこの言葉は「少年」という映画のすべてだ。
映画は息子に当たり屋をさせることによって生計を立てながら高知を皮切りに日本各地を転々としていく一つの家族を描いたロードムービーで、家族の姿を映し出すことにより日本という国を浮き彫りにしていくのだが、家族の赴く地は日本でしかない。そこにはいつも日の丸がはためいていて、日本語が話されており、新天地などどこにも存在しないのだ。本州の向こうの希望の地、北海道に渡ってもやはり、そこは日本なのであって端まで行けばいつものように海が行く手を塞ぐように待っており、この家族も少年も日本という呪縛から逃れられない。みんな家族と繋がっていて、家族は日本と繋がっていて、どこにも自立した個人など存在しないのだ。唯一人、「少年」が意思を持った個人として映し出されるが、日本から逃れられない家族同様、結局、少年も家族から逃れることができないのだ。
個人が存在することのできないイビツなロードムービーの中で描かれるのは個人と個人の絆などではなく、あくまで個人と家族、家族と日本の絆でしかない。
この映画は日本という家から家出をしようとする家族の姿を描くことによって、日本から逃れられない家族と同時に、家族から抜け出せない個人をも描いてしまう。そして、少年がいつも海に出くわすときに表すやりきれない表情によって、個人としての日本人の限界までも一気に見せてしまう極めて優れたロードムービなのである。
以上が、「an」(デイリーアン=日刊アルバイトニュース)に掲載された僕の文章です。
何度も書きますが、当時の学生は、普通にアルバイトをしていました。
僕も良く、アルバイトをしていました。
アルバイトニュースには大変お世話になったので、アルバイトニュースに僕の文章が掲載されたことは嬉しかったです。
アルバイトをせざるを得ない貧乏学生たちに良質な映画を見てもらい、日々のアルバイトの疲れを週末にレンタルビデオでも見て、精神的疲れを解消してもらいたいと思い、良質な映画の映画評をおもしろおかしく書いていました。
この「少年」という映画を題材にした映画コラムは、内容がシビアで正直に言うとおもしろおかしく文章を書けませんでした。
ただ、映像美に関しては、日本各地の風景を美しく撮影していたので、疲れ果てている学生さんに観てもらいたと思い、紹介する映画の一つにしました。
大島渚監督の映画は沢山観ましたが、他の映画は紹介しませんでした。
僕にとってはこの「少年」という映画が大島渚監督の映画の中では一番、好きな映画だったので、題材としました。
以上、「土曜の夜はこれを借りろ」③ (少年)
フォローワーさん1992人到達記念、1992年に書いていた文章
くだらない内容ですが、ブログに載せます。
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