2022年4月24日日曜日

「森と海からの手紙」 根開け再生の森に春 長野信濃「アファンの森」

 「森と海からの手紙」 根開け再生の森に春 長野信濃「アファンの森」

 2022417日に、早稲田大学探検部22OBの萩尾信也さんからメールが届きました。

 メールには毎日新聞の記事が添付されていました。

記事は、「森と海からの手紙」 根開け再生の森に春 長野信濃「アファンの森」という記事でした。

以下のような記事です。

近年まれにみる豪雪で1メートルほどの雪が残る3月末長野信濃町。信越境の山裾にある「アファンの森」では、木々の周りからが解けて地表が顔を出す「根開け」が始まり、シジュウカラたちのさえずりが春の訪れを告げていた。

英国ウエールズ生まれの探検家で作家のC・W・ニコルさん(享年79)の遺灰は、コナラの木の下の石碑中に納められていた。

彼が武道を学びに初来日したのは、1962年秋だった。「四季が育む、世界でも屈指の多様な生態系に満ちた島国」に魅了され、来日を重ねた。当時の日本には豊かな自然と、大地に根差して生きる人の営みが残っていた。

経済成長期の開発で山河が荒廃すると保全活動の先頭に立ち、80年には信濃町に居を構えた。荒れ果てたまま放置されて「幽霊森」と呼ばれていた10ヘクタールの森を購入したのは6年後。「アファンの森」と名付けて再生に着手し、今では34ヘクタールに広げて、1540種もの動植物が息づく日当たりの良い聖域となった。

彼はその森に、東日本大震災で家族を亡くした子どもたちや、心身に痛みやハンディを抱える人々を招待した。そして、森に身を置く日々の中で次第に笑みを取り戻していく彼らの姿を見守ってきた。

私がニコルさんの知己を得たのは、30年ほど前の夏だった。通の友人であるカヌーイストの野田知佑さんらと、カヤックで四国の清流「四万十川」を下る旅に出た。

野田さんは世界各地の川を旅してきた。川をコンクリートの水路に変えて生き物たちのすみかを奪っていく日本の行政にあらがいながら、どもたちに川遊びの楽しさを伝える「川の学校」を主宰してきた。

四万十川の川旅は、山河や海が子どもたちの遊び場だった時代をほうふつとさせる日々だった。大きな淵を見つけるとダイブして、ハヤやアユを追い続けてきた。

夕べには岸辺でたき火を囲み、地元の人々が差し入れてくれたテナガエビやウナギを肴に地酒を堪能。野田さんのハーモニカに合わせて、ニコルさんが自慢ののどを聞かせてくれた。

2015年には、ニコルさんと一緒に耐氷船で北極圏を巡った。彼が、極地探検家として青年期を過ごした思い出の地だった。

そこで、温暖化で崩落する氷河や生息域を失っていく白熊の姿を目の当たりにした。「同化政策」で先住民のイヌイットの定住化が進み、自然の恵みを分かち合う狩猟生活は崩壊。人々は生活保護に頼り、アルコールや薬物への依存や、自殺やDV(庭内暴力)が深刻になった。

健康管理には無頓着だった彼の直腸にがんが見つかったのは、16年の初夏だった。手術を経て復調の兆しも見えたが、3年後に転移が見つかった。

スマートフォン越しに声を聞いたのは、コロナ感染が拡大していた202月。彼は東京都内で入院生活を続けていた。

「地球の行く末に思いをはせていると、果てしない宇宙に奇跡のように存在するこの星がますます小さくなって、人が金太郎あめのように均一になっていくように思えてならないよ」。悲しげな口調が、耳にこびりついている。

「最期は自宅で迎えたい」との思いから、退院して家に戻ったのは翌月末だった。1週間後に容体が急変し、搬送先の病院で43日に息を引き取った。

亡きがらは森に戻り、スタッフや仲間たち野辺で摘んできたユキワリソウを添えて、出棺。荼毘の煙は、県境の空に溶けていった。

そしてこの春。私はアファンの森で野田さん(享年84)の訃報に接し、ニコルさんの石碑に報告した。

石碑には、ニコルさんの思いが刻んである。

<森と風に耳をかたむけてほしい。なにものにもとらわれず心を開けば、きっと囁きが聞こえるだろう。よく来てくれたと>

「森が荒廃すると川や海も荒れ、人の心もすさんでいく」。ニコルさんと野田さんが共有した思いである。

アファンの森には、ほどなく紅葉のカタクリの花が咲く。そして、「SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が世間で飛び交う中、輸入材の高騰による木材不足で、アファン周辺の森では乱伐が続いている。

人の暮らしが自然と乖離していくこの時代。耳を澄ませ、森と川から聞こえてくるささやきを記していきたい。

 【客員編集委員・萩尾信也】

 =毎月第3火曜掲載

 なかなか良い記事だと思いました。

 20224月17日に早稲田大学探検部22期の萩尾信也さんから記事が送られてきたので、記事をブログに載せます。

 以上、「森と海からの手紙」 根開け再生の森に春 長野信濃「アファンの森」

 ブログに載せます。

 

 

 

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